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オランダ, Field with tulips, image © Corbis Japan
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オランダ人が‘トータル・フットボール’を発明してから30年。その、画期的フットボール哲学の誕生に、オランダの平たんな風景がどのような影響を与えたのか、フットボールカルチャー記者、ベン・リトルトンが検証する。

オランダ人に地平線を描かせると、一本の直線を描くだろう。一方、イングランドのヨークシャー出身の人やイタリアのトスカーナ出身の人が描く地平線には、隆起や丘があるだろう。

オランダの土地の平坦さがオランダ人に与える影響は大きい。まず芸術だが、ポストモダンの彫刻家、ジェロエン・ヘンネマンは、フェルメールの作品を「広々とした空間」を描いていると言った。そして写真に関しては、写真家ハンス・ファン・デル・メールが「嫌気がさすくらい何もかも直線だ」と言った。さらに建築について言えば、アムステルダムのスキポール空港は、平屋にすべてが収められた最初の空港のひとつである。

そして、1970年代のアヤックスのプレースタイルさえも、オランダの平坦な風景に影響されて誕生した。

トータル・フットボールの誕生
狭い国土におよそ1,500万の人々が暮らすオランダにとって、空間はいつも貴重なものだった。アヤックスのディフェンダー、バリー・フルスホフ(Barry Hulshoff)は、アヤックスがどのようにその貴重な空間を利用し、1971年、1972年、1973年のヨーロッパ・カップで勝利することができたかを、こう説明した。

「私たちは常に空間について話し合っていました。ヨハン・クライフ(Johan Cruyff)は、いつもプレーヤーがどこへ走るべきか、どこに立つべきか、いつ動いてはいけないかについて話していました」

ポジションを絶え間なくチェンジするトータル・フットボールとして知られることになったこの戦術は、クライフの空間に対する認識から生まれた。

「トータル・フットボールとは、空間を作り出し、空間へ入り込み、空間を構築することです。まるでピッチで建築を行うみたいにね」と、フルスホフは言った。"

トータル・フットボールのシステムは、組織的な共同作業によって発展した。当時の監督、リヌス・ミケルス(Rinus Michels)、彼の後任のステファン・コバチ(Stefan Kovacs)、またはクライフの誰か一人だけによって作り出されたというわけではない。

ヨハン・クライフの功績
それでもやはり、クライフの影響は大きい。わずか17才でアヤックスのトップチームデビューを飾った彼は、ピッチでの成り行きに目をくばった。デイヴィッド・ウィナーは、著書『Brilliant Orange: The Neurotic Genius of Dutch Football』の中で、‘クライフはオランダ人独特の方法で空間を見つめていた’と書いている。

‘彼は、ピッチの幾何学と秩序を天性の勘で理解していて、それが皆に賞賛されていた’ クライフは、グラウンドから目を離している時に、‘音が変だ’としてあるプレーヤーのテクニックを批判したこともあり、‘スパイクをはいたピタゴラス’と呼ばれていた。

クライフは、空間の創造的な活用方法を考えた最初のプレーヤーだった。彫刻家ヘンネマンはこう言う。
「クライフの時代に突然、フットボールはただお互いの足を蹴り合うスポーツではなくなりました。そこには、なにか崇高なものがありました。おそらく、オランダ人のフットボールへの美意識と関係があったのでしょう。クライフは、フットボールをフィールド全体の総合された動きだと考えていました。個人の行動の寄せ集めではありません。もし、上下に抽象的な動きをする美しい波線でできた、2キロメートルのピッチが存在したら、クライフは喜んだことでしょう」

クライフは自分のフットボール哲学をこうまとめている。
「シンプルなフットボールは、最も美しい。しかし、シンプルなフットボールをプレーすることは、最も難しい」

文:ベン・リトルトン

本記事は、『Brilliant Orange: The Neurotic Genius of Dutch Football』( Bloomsbury、David Winner著)のレビューを元に書かれています。

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