フットボールカルチャー > フットボールの舞台裏 > 最新テクノロジーでゴール論争に終焉?
21世紀のフットボールには、最新鋭技術を駆使した新開発ボールが導入される見通しとなったが、FIFA(国際サッカー連盟)は、最終審判を下すのはあくまで審判員の役目であると強く主張している。
フットボールの論争と言えば、いまだに一番に挙げられるのが1966年ワールドカップ決勝におけるジェフ・ハースト(Geoff Hurst)2点目のゴールだ。舞台はロンドンのウェンブリースタジアム(Wembley Stadium)。イングランドと西ドイツが2-2の同点で迎えた延長前半、両チームの攻撃は一歩も譲らず、どちらに勝利が渡ってもおかしくはない白熱した展開を迎えていた。10分後、ノーマークのハーストが西ドイツゴールに向かって蹴ったボールがゴールバー下部に当たり、'ゴールラインの後ろ'とも、多くの人が言うように'ライン上'とも見える位置に落ちた。ラインズマンに確認を取った主審は、ドイツチームから猛烈な抗議を浴びる中で、ゴール有効の判定を下した。そして、終了わずか1分前、イングランドのハーストは、追い打ちをかけるゴールを決めてイングランドに4-2の勝利をもたらし、フットボール史にその名を残したのである。
30年経った今でも、ドイツサポーターによる、イングランドが不当にワールドカップを獲得したという非難の声は後を絶たない。ビデオでのリプレイを何度行っても、専門家はイングランドの3得点目が正当だったという確証は得ていない。ゴールライン論争が起こることは珍しいが、しかしこれが試合の行方を変え、果てはチャンピオンシップの勝敗に影響を与える可能性さえ持ち合わせているのだ。しかし、フットボールに小さなマイクロチップを埋め込んだ'スマートボール'の導入で、ゴールラインをめぐる論争も今や過去のものとなりつつある。ボールがゴールラインを越えると、マイクロチップがコンピューターを通して、審判が装着する腕時計に信号を送るという新技術だ。
この'スマートボール'は、著名スポーツ用具メーカーが開発し、先頃ペルーで開催された、U-17世界選手権で試用された。審判がこの最新技術による判定を必要とするような場面は実際にはなかったものの、審判や関係者たちからのフィードバックは非常に手応えのあるものだった。この'スマートボール'は、2005年末に日本で開催されるトヨタカップでも再び試用され、その後2006年3月にドイツで開催されるワールドカップに導入するかどうかの決定が下される。
昨年、ゴールラインに関する審判の判定に対しての論争が高まったことが注目を浴びて以来、新技術の導入を望む声は一段と高まっていた。今年の初め、プレミアリーグでは、マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)のゴールキーパー、ロイ・キャロル(Roy Carroll)がボールを取りこぼしゴールラインの後ろ、自陣ゴール内に落とした。これがトッテナム・ホットスパー(Tottenham Hotspur)の決勝ゴールとなるところだったが、主審の判定はノーゴール。スタジアムの観客やTVで観戦していた何万人もの視聴者がキャロルのミスを目撃していたにもかかわらず、主審はゴールインをしっかり見ていなかったと言ってプレー続行のホイッスルを鳴らした。この試合は0-0で終了し、この結果、マンチェスター・ユナイテッドはチャンピオンズリーグへの進出を確定させたのだった。
この先しばらくは、'スマートボール'以上に進んだ技術がフットボールに導入されることはないだろう。FIFAは、あまりに進化しすぎた技術を導入してしまうと、フットボール本来の要素であるスピードや迫力が損なわれてしまうのではないかと懸念を抱え、今でも最終的な判断は審判に委ねている。前回の日韓共催ワールドカップを台なしにした判定問題には、昔ながらの'人材トレーニング'をもって対応することになった。ドイツ大会に向けてチームを組む審判とラインズマンを事前に選抜し、全員が来年の開催に向け、定期的にトレーニングセミナーへ参加することが義務づけられている。
最終判断を人間が行う以上、ハーストや、マラドーナ(Maradonna)の'神の手'のような、ワールドカップでのゴール論争は、フットボールから完全に消えることはないだろう。2006年夏には、ベルリンで行われるワールドカップ決勝戦の終盤でルーニー(Rooney)やベッカム(Beckham)が疑惑のゴールを決め、ヨーロッパ中のパブからワールドカップの栄光を横取りされたと訴える、落胆したドイツ人サポーターの叫びが聞こえてくるかもしれない。
文:ベン・ラプトン 2005年11月
Top of page
|