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「フットボールのシャツをデザインするということは、世界中の多くの人にとっての“貴重な財産”を扱うような責任あること」
ファッション界はブランドで溢れているが、世界でどれだけ多くの人の目に触れているかということになると、ヒューゴ・ボスやポール・スミスもマンチェスター・シティのサポーター、ダラン・メドレー(Darran Medley: 33歳)にはかなわないだろう。たとえば、トレンドの先端を行くベッカムでさえも、いつもメドレーの作品を着ている。と言うより、それ以外のものを着てグラウンドに立つことはないだろう。
フットボールの陰の立て役者、デザイナーのメドレーはチェシャーのフットボール用品メーカー、アンブロ(Umbro)の国際アパレル部長だ。現在のマンチェスター・ユナイテッドとイングランド代表のユニフォームは、アンブロ製。アンブロという社名は、1924年に会社を創設したハンフリーが考えたものだが、その名前を知らない人も、二重になった菱形のロゴには見覚えがあるに違いない。現在ノルウェー代表、チリ代表、アイルランド代表、チェルシー、セルティックなど、30〜40チームがアンブロ製のユニフォームを採用している。1966年のワールドカップでは、出場16か国中15か国がアンブロのユニフォームを着用した。このとき決勝でイングランド代表が着ていた赤シャツは、伝説となった。他に有名なのは、ブラジル代表が1954-94年に着用していた黄と緑の縞シャツだ。ブラジル代表は、アンブロのユニフォームを着て、ワールドカップで数々の勝利をあげたのだ。
ユニフォームはどのようにデザインされるのか? メドレーは4人のデザイナーから成るチームを率いている。新しいシャツを製作する際、それぞれが10着ほどのデザインを考える。「90年代には、ファッション市場にうける、ジーンズに合うシャツのデザインがトレンドだった。今は、伝統的な形に沿いつつ、ファンにも受け入れられる現代的なタッチを取り入れている。アイデアを得るために、車、家庭用品から紳士服、スポーツ衣料まで、あらゆるデザインを参考にする。ただ、フットボールシャツのデザインが他のデザインと違う点は、世界中の多くの人にとっての“貴重な財産”を扱っているということだ」
素材の選択も非常に重要だ。マンチェスター・ユナイテッドの現在のシャツには、ポリエステルとマリノウールの混紡、スポーツウールと呼ばれる新素材が使用されている。この素材は、選手がシャツに求める2つの条件−軽い着心地と湿気をためない−に応えるために導入された。
メドレーのチームは、最初の10枚の試作品から2〜3枚を選び、アンブロの衣料技術者がシャツを作成する。これを選手が実際に着用して試し(練習での着用は重要なテスト)、最終候補を決定する。メドレーのチームは年間30〜40種のユニフォームをデザインし、アンブロは毎シーズン約200万着のユニフォームを、主に極東で製造している。
メドレーのお気に入りのシャツは? もちろん1970年代初期のマンチェスター・シティのシャツだ(袖口と首回りが白で地が空色のもの)。彼のマンチェスター・シティへの忠誠は常に変わらないが、1992年のマンチェスター・ユナイテッドの真っ黒なアウェイ用ユニフォーム(このとき審判は緑のシャツの着用を余儀なくされた)、左胸の「The three lions」(3匹のライオンの紋章)の下に、赤の縦縞が走るイングランド代表のアンブロ製シャツも気に入っている。
嫌いなシャツは? 1990年代初期アーセナルのアウェイ用ユニフォーム以外にない。「センスが悪い」とメドレーは言う。
メドレーは今後の傾向として、マンチェスター・ユナイテッドの画期的なリバーシブルのアウェイ用ユニフォームを挙げる。この白と金のリバーシブルなら、1枚の値段で2枚分の価値がある。また、現在陸上競技ではスタンダードとなっている、体にピッタリするライクラ製のオールインワンユニフォームの出現も間近だと、彼は考えている。ファンにうけるかどうかは別として、これならシャツの引っ張り合いがなくなるだろう。
自らユニフォームをデザインしたいと思うファンは多い。アンブロがマンチェスター・ユナイテッドの新ユニフォームデザイン・コンテストを新聞紙上で実施した際、参加者は5万人に上った。そこで、未来のデザイナーへ、メドレーからのアドバイスはこうだ。
「フットボールには絶対向かない色もある。銀色やパステルカラーはあまり向かない。茶色は問題外だ。最高のシャツは、現代的でさわやかな印象を与えるもの。そして目立つものだよ」
文:サイモン・イングリス
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