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ボールに感謝!

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サッカーボールがなければ、スター選手も、ワールドカップも、世界のサッカー産業もあり得ない。ボールこそ、フットボールにおける‘影のヒーロー’だ。

サッカーボールについて語られることはあまりない。ワールドカップでは、ゴールキーパーが、大きく曲がるシュートをキャッチできず、新しいボールのデザインのせいにすることがある。ボールが相手選手に投げつけられることもある。たとえば、トルコのハカン・ウンサル(Hakan Unsal)は、オーバーなリアクションを見せたリバウド(Rivaldo)に、ボールを蹴りつけ退場となった。それから、怒ったプレーヤーがボールをピッチの外に蹴り出してしまうこともある。でも、こんな場合を除いて、ボールそのものが注目されることはない。

でも、かつてダービー・カウンティとノッティンガム・フォレストを率いた名将、ブライアン・クラフ(Brian Clough)は、サッカーボールの大切さに気付いていた。彼はいつも、キックオフの10分前にロッカールームに行き、タオルの上にボールを置いてこう言った。

「これが私たちが使用するボールだ。試合では、これを取りに行くんだぞ!」 これが、クラフがいつも試合前にチームを集めて話すことだった。

ブラジルの選手は、ドリブルと短いパスでボールを愛撫するように扱う。一方、英国の選手はロングパスを出すために、ボールを強くキックする。FA(イングランドサッカー協会)のテクニカルディレクター、ハワード・ウィルキンソン(Howard Wilkinson)が、こんな冗談を言ったことがある。

「私はグレアム・テイラー(Graham Taylor)と共に、ボールに窒素を注入しようと思う。そうすれば、ボールがもっと高く飛ぶからね。試合開始30分前にはボールに鎮静剤を与える。そして、ハーフタイムにはアスピリン(頭痛薬)、試合終了後にパラセタモール(鎮痛剤)を与えようと思っている」

中世に初めてサッカーボールが使われた時、それは豚や羊の膀胱を膨らませたものだった。以来、ボールはかなりの進歩を遂げた。のちに、膨らませた膀胱の外側を革で覆うようになり、最終的には動物の膀胱の代わりに、ゴムが使われるようになった。FAは、1872年になるまでボールのサイズを規定しなかった。また、1960年代まで、革のボールは茶色だった。ぬれると重くなるのと、レース状のひもがついているのとで、ヘディングをすると痛かった。

イングランド代表のウィング、サー・スタンレー・マシューズ(Sir Stanley Matthews)の上げるクロスボールはとても正確だった。センターフォワードが楽にヘディングできるよう、いつもひもがある部分を外側に向けてクロスを上げることができたと言われている。

1960年代に重合体素材の人工皮革のボールが開発され、ワールドカップ本大会では、86年に初めて使用された。かつてボールは茶色に焼けていた。思い出されるのは、66年ワールドカップのオレンジ色のボールだ。それが現在、雪の日によく見えるように作られた蛍光オレンジのボールを除いて、ボールの色は白。白いボールはもともと、サントスFC(Santos FC)がナイトゲーム用に考案したのだった。また、現在のボールは軽く、人工皮革か樹脂コーティングが施されたものだ。

たぶん、試合用のボールのデザインをよく知っているのは、審判だけだろう。FA競技規則の規則2にこう明記されている。「審判は、ボールの重さ(410 - 450グラム)、サイズ(球囲68 - 70センチ)、形(球形)、空気圧(0.6 - 1.1気圧)、素材(革またはそれ以外の認可された素材)を確認すること」

サッカーボールのデザインは、使用目的によって変えられることもある。目が一部不自由な人たちのリーグでは、150の玉が入ったボールが使用されている。その音によって、ボールが飛んでくるのがわかるようにだ。

ボールの大切さを実感させられることが、まれにある。1946年と47年のFAカップ決勝では、ボールが破裂して試合の進行に遅れが出た。1930年第1回ワールドカップの決勝では、ウルグアイとアルゼンチンがボールをめぐってもめ、前半と後半では違うボールが使用された。

2002年のワールドカップでも、ゴールネットに向かってけられたボールの空気が抜ける、というような出来事があれば、みんながボールの大切さをあらためて実感したことだろう。もしボールが破裂したら、主審が新しいボールをドロップして競技が再開される。ただし、ペナルティーエリア内で破裂した場合は、その地点に最も近いゴールエリアのライン上でドロップボールが行われる。審判以外でこれを知っている人は、そうはいない。

ただ、普通、ボールが破裂することはない。ボールは、ただ黙々と、そしてきちんと自分の役割をこなす。ありがたいことに、競技規則に定められているおかげで、ボールに広告が掲載されることもない。今度試合で活躍しているボールを見たら、応援してやってほしい。世界で一番重要な、球形の物体なのだから。

文:ピート・メイ

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