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インテリアショップを持つなら、海外の工房とも取引をしたい。だから、英語力は必須だった

 

インテリアショップ出店を目指して、英語力強化のため英国留学。ラトビア家具と出会い、帰国後、日本では唯一のラトビア家具と雑貨を取り扱ったショップをオープン。

名前:
岩崎朋子さん・木製家具デザイナー

留学先:
Leeds Metropolitan University (LMU)

プログラム名:
English Plus: English with Professional Studies

ラトビア家具・雑貨との“超運命的”な出会い

 世田谷区等々力に構えるインテリアショップ『巣巣(SUSU)』。店内に一歩足を踏み入れると、ほのかに甘い木の香りがする。岩崎さんは木製家具のデザイナーであり、この店のオーナーでもある。 ショップ立ち上げを目指して英語力強化のために英国留学。そこでラトビア家 具・雑貨と運命的な出会いを果たし、その魅力に惹かれ帰国後はラトビアの家具・雑貨を扱うショップをオープン。・・・とだけ語れば、順風満帆のキャリアアップ物語に聞こえるかも知れないが、その陰には思いもよらない恐ろしい体験も潜んでいた。

 強盗ですか?

 「はい、強盗です。留学中のホストファーザーがラトビア出身で、帰国前に彼の薦めでラトビアへ行こうと考えていたんです。スペインからパリ、フィレンツェ、ラトビアと渡る、楽しい家具の視察旅行。ところがスペインの薄暗い路地で、“首しめ強盗”の餌食となりその場で失神してしまって。パスポート、財布、 デジカメなどすべてを奪われ、結局、ラトビアには行けなかったんです」

怖くなかったですか?

 「怖いですよ。でも、そのときラトビアに行かなかったことは、結果的にラッキーだったんです。実はいま取り引きしているラトビアの家具屋さんは、その当時オープンしていなくて。いったん日本に帰国して半年ほどしてラトビアを訪れたとき見つけたんです。ほんと、これぞ超運命的な出会いとでも言うんでしょうか・・・」

 もちろん、英国に行かなければラトビア家具に出会うきっかけもなかった。しかし、“ただでは起きない”とは言うが、岩崎さんはまさに“失神してもただでは起きない”人だ。そして、いつだってポジティブなこの考え方が、岩崎さんのキャリアアップのキーワードとなっている。

林学科で学んだことがインテリアデザイナーの出発点

 通常インテリアデザイナーになるためには、美術・造形系の大学・短大、イン テリアデザイン系の専門学校に進学し、卒業後はインテリアデザイン事務所、家具などのインテリア会社、建築関連会社などに就職するのが一般的。しかし岩崎さんの場合、「もともと国立大学の理学部を志望していたんですが、受験科目の問題で受験が無理だと言うことを知って、農学部の林学科に進んだんです。別にインテリアデザイナーになろうなんて、その当時は考えてもいなくて。ただ、林学科で学んだ ことで『木』の魅力にも触れることができ、結果的に今の自分があるのも、そのおかげだと思っています。まあ、実習では杉の木に登ったり、枝打ちしたり、ほとんど木こりでしたけどね」

 ちなみに国立大の理学部を諦めたのは、「理学部を受験するのに、生物1科目しか勉強していなくて・・・知らなかったんです、理科1科目で受験できないこと・・・」と当時を思い返して笑う。 大学卒業後は世論調査・市場調査をする会社に就職。入社後しばらくして結婚、退職、ついでに旦那さんの鳥取赴任が決まり、岩崎さんも一緒に付いていくことに。

 「でも、働こうと思ってもなかなか仕事が見つからない。そこで考えたんです、地方でも自分の好奇心が満たされる仕事を得る方法はないか。林学科で学んだことで『木』は大好きだったし、知識はあった。じゃあ家具デザイナーを目指そうって」 早速、武蔵野美術大学の通信教育でデザインの勉強を開始。デザイン理論や製図・製作を学び、さらに職業訓練校で家具製作を徹底的に学んだ。

東京で腕試し。ショップで働く修業時代

 旦那さんの東京への転勤が決まり、3年半の地方生活と別れを告げる。いざ東京へ。

 「自分でデザインしたい!仕事で海外に行きたい!-自分が働くインテリ アショップを選ぶ基準はこの2点。履歴書にこれまでの経歴、家具についての知識と意気込みをまとめて提出しました。そして希望のショップで働くことになって。このときは家具をデザインして完成するまでのプロセスや、発注、メンテナ ンスなど、インテリアショップでの仕事をひととおり経験しました」

 最初に働いたインテリアショップを辞めた後、知人の紹介で今度はアジア雑貨店で店長兼バイヤーとしての職に就く。

 「バイイングは興奮しましたね。観光客では知り得ない買い付けの場所を先輩のバイヤーに教えてもらったり。もちろん日本国内でもいいものはたくさんありますが、日本だけに限定しないで海外に目を向けると、そこには自分が見たこと のないすてきな雑貨や家具が溢れている。ショップを立ち上げるときに“海外と取引をしたい”と考えたのも、このときの体験が大きいと思います」

留学で磨いた、英語力+プレゼン能力

 仕事を通して家具デザインの魅力のどっぷりとはまっていく日々。そのうち、 自分だけのお店を持ちたいという想いが沸々とわき出してきた。 「自分のショップを持とうと考えたとき、イメージとしては木製の家具に溢れた優しい空間であること。もちろん家具は自分でデザインしたい。でも、最終的に作り上げていく段階では、国内の工房だけでなく視野を海外の工房にまで広げて、自分が納得のいく家具を作り上げたかった。そのためには英語力は不可欠。だから留学を決めたんです」

 出店は2年後と決め、まずは1年間語学研修、帰国後の1年間は出店準備に充てようと考えた。また、どうせ留学するなら英語を学びつつ、デザインの勉強もしてみたいと思った。

 「そもそも英国を選んだのは、子供のころに香港に住んでいたこともあり英国を身近に感じていたこと、アメリカよりも治安が良さそうだし、英国に行けば周りのヨーロッパの国にも気楽に遊びに行けるだろうと思ったからです。学校選びは、英語研修とデザインの勉強が1年間でできるところ。当時の英語力はテストのスコアで説明するのは難しいですが、留学手続きを自分で行うのも困難なレベル。分厚い学校資料に目を通すだけでクラクラしましたね。そうこうしているうちにリーズにある LMU (Leeds Metropolitan University)が見つかり、今までの作品のファイルや志望動機を書いた作文を提出して、ようやく入学にこぎつけました」

 岩崎さんは、まず LMU 内にある語学研修機関で一般英語を半年間学ぶ。それから同語学研修機関の English Plus: English with Professional Studies というコースを半年間受講した。このコースでは、デザインのクラスを2つと英語のクラスを2つ受講。

 「英語力は語学研修期間の6カ月でも相当スキルアップできましたが、やはり実際の専門分野の学習を行ったことで、さらにブラシュアップできたと思います。English Plus でのデザインのクラスは2つで、ひとつがデザイン概論(3カ月間受講)ともうひとつがデザイン実技(3カ月間受講)でした。デザイン概論では、『ブランドの構築』 や『デザインとジェンダー』などについての講義を受けた後、自分で論文資料を読んでみんなの前で発表するというもの。プレゼンテーションでは、論文の主意を理解することは当然のこと、それを自分の見解で説明・意見しなくてはならず、準備も大変でした」

 それでもこのプレゼンテーションを繰り返すうちに、デザインの歴史や取り巻 く環境についての知識を深く身に付けられただけでなく、スピーチ力も大幅に身に付いた。

 「今、海外の工房などと打ち合わせをする機会が多くありますけど、あのとき得た自分の意見を論理的に説明するといったプレゼンでのスキルはとても役立っていますね」

英国でのさまざまな“出会い”が、『巣巣』を形作っている

 「実技のクラスでは、海外の大学ならではの自由な『発想→作品完成』のアプローチの仕方を学びましたが、一番の収穫は、多くの仲間と出会えたことです。3 D デザインのウェンディ先生を含め、デザイナーとしてのイマジネーションを大いに刺激してくれたクラスの仲間たち。今、自分のショップには、自身がデザインしたものだけでなく、当時のクラスで知り合った友人がデザインしたものも並んでいます。また英国でのホストファーザーがラトビア出身で、その縁があってラトビアの家具にも出会えました。留学は、それまで自分に足りないスキルを補うためだけでなく、こういった人脈を築けることも大きな魅力ですね」

 ラトビアの家具について補足すると、今日本でブームとなっている北欧(デンマーク、フィンランドなど)の家具の多くは、バルト海の小さな国・ラトビアで作られている。ラトビアの首都・リガは世界遺産にも指定されている美しい町並みを残し、家具工房の他、町の至る所にハンドクラフトによるバスケット、麻製品、琥珀のアクセサリーを売る露天が所狭しに並んでいる。

 「自分でデザインした家具は中国の工房で仕上げていますが、ラトビアで見つけたショップと提携し、オールドパインの家具などを輸入しています。他にも手織りのテーブルリネンやラグ、ウール毛布などを輸入していますが、これらは色の組み合わせも独特で優しくて、大変きれいです」

 1年間の英国留学、1年間の準備期間を経て『巣巣』を立ち上げたのは2003年の5月。「インテリアデザイナーとなって、いつかは自分の店を持つ!」と決心してから約10年。経営に必要な語学力、交渉力、さらに若きデザイナー仲間とラトビア家具-。留学で得たどれかが欠けても『巣巣』は完成しなかっただろう。ただ、それらを結びつけたのは間違いなく、岩崎さんのポジティブな行動力だ。

プロフィール

1987/4 ~1991/3
東京農工大学(林学科)に入学。『木』の魅力に出会う。
1994/4~1997/3
武蔵野美術大学の通信教育でデザインを学ぶ。その後職業訓練校に通い、家具デ ザインのスキルを身に付ける。
1998/1~
東京のインテリアショップで働き始める。家具のデザインから完成までのプロセスや、発注、メンテナンスなど、インテリアショップでの仕事をひととおり経 験。この時期、アジア雑貨の店長として、海外への買い付けも経験。
2001/3~
LMU (Leeds Metropolitan University)の語学研修機関に入学。
2001/9~
語学研修を終え、デザインのクラスに移る。
2002/3
メトロポリタン大学でのプログラム修了。旅行先のスペインで強盗事件の被害に 遭う。ラトビアへの視察旅行を取りやめ帰国。
2002/7
ラトビアへ家具の視察旅行へ出かける。ラトビアへの視察は、11月と翌年2月にも。
2003/5
念願のインテリアショップ『巣巣』オープン。ちなみに巣巣のロゴマークは、香 港出身の有名なグラフィックデザイナーであるアラン・チャンの作。
 
 

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